先輩の声
神戸大学大学院 経営学研究科
JBCCは、自身の力を客観的に知り、MBAの学びを実践的に統合できる最高の機会
植森 伸次さん
所属:都市銀行
部署:本店 上席調査役
− まずはじめに、植森さんはなぜMBAで学ぼうとされたのですか?
私は銀行に勤めているのですが、自身のキャリアの選択を考えた時に自分が経営について何も知らないことに気づきました。ご存じのように、銀行は実質的な停年が早く、50歳前半で関連会社かお取引先へ出向となります。役職定年が現実的になったとき、次の職場でも自分自身を充実させたいと思い、いい機会なので学びなおしたいと考えました。もちろん仕事柄、多くの会社の経営に触れてきましたが、実は経営を体系的に理解しているわけではないなと。銀行マンなのでお金に関わることは相応に知見もあると自負していますが、マーケティングも知らないし、人事の経験も十分にはなかった。もちろん銀行ではイノーベーションに直面することは経験上なかったので(笑) これは将来困るだろうな、もっと経営について理解した上で仕事ができた方が人生充実するのではないかと思ったことがきっかけです。神戸大学MBAを選んだのは、元々私の母校で愛着もあったためです。
− 入学してまだ間も無い4月下旬、仕事とMBAの両立にも戸惑う頃。JBCCにチャレンジを決めた理由は何だったのでしょうか?
少し恥ずかしいのですが、私は同級生の中では歳も上の方で、当初MBAのクラスに溶け込めなかったんですね。正直JBCCのことを知った時も、「若い子らが頑張ったらええやろ」くらいにしか考えていませんでした。ところがJBCCで戦うには財務分析が必須だということで、学友の一人が銀行勤めの私に声をかけてくれました。内心嬉しかったですね(笑) 学校へ行くモチベーションも上がりました。だから私がJBCCにチャレンジを決めた理由は「みんなと仲良くなれるから」ということになりますが、実際にそうなりました(笑)
2年目は、1年目に予選通過できなかった悔しさと、その年の神大M2生チームが優勝していたので、同じ経験をしたかった。高校生の頃にバスケットをしていて真剣に全国大会を目指していたけど叶わなかった経験もあり、全国大会出場を叶えたかったという思いもありました。残念ながら優勝は逃しましたが、予選を通過してファイナルステージに進み、準優勝できた達成感はかけがえのない経験となりました。
− MBAの学びとJBCCの学び。その違いについてどう感じていらっしゃいますか?
神大MBAの講義や特徴であるグループプロジェクトでは、学友との議論が活発に行われます。アカデミックな視点からの議論は大事ですが、神大MBAでは、それらに加えて「発見」を求められると感じます。それに対してJBCCでは、極めてリアルに設計されたケースに対し、チームで経営戦略を打ち立てその優劣を競います。MBAで学んだ知識をケースに応用し、実現可能か検証を繰り返す。それは実践的な「訓練」です。思索の中から見出す「発見」と、実践的な「訓練」という対極の観点から経営を考察するという点で、JBCCとMBAのカリキュラムは経営学を学ぶに際して、その学びを相互に補完するものではないかと考えています。
− 植森さんが感じる、JBCCの経験の意義をお聞かせください。
おそらくMBAで学ぶ以前は、ほとんどの人が自社の社長の語る経営ビジョンや戦略の話、特にその真意にあまり関心を向けなかったのではないかと思います。しかしJBCCなどで経営知識を戦略へと統合しようとする経験があると、「あぁ社長、こういう根拠があって言ってるんだな、その判断はもっとこの点を検討する必要があるんじゃないかな」と社長の立場で思考するようになる。そうすると自分が次に何をするべきなのか、どう判断するべきかということを考えるようになります。それまでより一つ上の視点から物事を見る感覚が身につくのではないでしょうか。その感覚は、より若い時に持つほど自身のキャリアに大きな影響を生むと思います。
また、MBAを修了したからといって、学んだ経営戦略を実社会で今すぐ使う機会は、実際はそんなにあるわけでは無いと思うんですね。経営戦略とは経営者のものだとも言われますが、一般的な企業では部長クラスであっても自社の経営戦略の立案に携わる機会は少ないのではないでしょうか。この点においてもJBCCを通じて経営戦略の立案をする経験は、シミュレーションといえども、他では得難い機会を与えてくれます。
それからこれは意外に大きなことだと思うのですが、例え実務で経営戦略の立案に関わる機会を得たとしても、そこには自分より年齢もポストも上の人間が何人もいるわけです。例え「自由に意見を述べてくれ」と言われても、当然上の人には意見しにくいに決まっています(笑) でもJBCCのチームだったら年齢も性別も関係なく、みんな同級生で対等。このフラットな関係性で経営戦略を議論できる場も限られていると思います。この経験は私にとってとても意義のあるものになりました。
実際現在は、出向先企業において経営トップに近いポジションで仕事をさせて頂いていますので、日々の業務で経営戦略を常に意識することを要求されますが、JBCCでの経験が自分の中では活きていると実感しています。
− 植森さんは2年連続でJBCCにエントリーされていますが、1年目と2年目を通じて感じられたことはありますか?
まず客観的に見てM2生のチームの方が有利なのは事実です。そうでなければ1年間MBAで何をしていたのですか?ということになってしまう(笑) でもこう言うと「じゃぁM1では参加せず、M2になってからにしよう」と思われてしまうかもしれませんが、あえて「JBCCは是非2回チャレンジしてほしい!」というのが私の意見です。
1年目のJBCCは、もちろん出場する以上は本戦進出、入賞を目指して必死に取り組みましたが、最大の収穫は仲間と真剣に議論を重ねた時間と、その時点での自分の力を客観的に知ることができたということです。神大MBAでは、代々出場経験のあるOBやM2チームがM1チームの出場をサポートしてくれるのですが、M1の私から見たM2生の能力の高さに驚かされ、MBAで学ぶ1年後の到達目標をリアルにイメージすることができました。はじめに現在地を俯瞰することができたおかげで、その後1年間の学びをより充実したものにできたと思います。
2年目の最大の収穫は、1年間学んできた経営学の知識を有機的に統合することができたということです。優れた戦略立案には、マーケティング、組織、人事、財務等全ての経営知識の統合が必要です。この経営学知識の統合を果たすために、JBCCの極めて実践的なケースに仲間と一緒に挑めたことは最高の経験でした。
− 昨年度大会で準優勝を獲得された「植森流 JBCC必勝の秘訣」を、是非お教えいただきたいのですが。
そうですね。私個人の考えでは、チーム内の議論を活発に行うことでしょうか。白熱すると意見の相違なども出てきますが、正確にチーム内の意見を共有するということが大事です。議論が高じたときにこそ、自分自身の伝達力や理解力に対して謙虚になることが大切です。人の意見をよく聞き、人にわかるように自分の意見を伝える。その為には自分自身がより深く物事を理解し、改めて学ぶという姿勢で臨むことが重要だと思います。この点は普段の講義での討議にも重要なことです。
次に、チームのメンバー構成については、できるだけ異業種かつ異なる年齢層にするなどダイバーシティを意識した方が視野が広がり、ケース研究を通じてよい学びが得られと思います。勝ち上がるという意味で最も大事なことは、やはり「自分たちがNo.1の戦略を提言する!」という強い意志ではないでしょうか。また、MBAの日頃の講義に積極的に参加することと、学んだ知見やツールはどう使えるか?というシミュレーションを、必ず自身の業務にあてはめて常日頃から行うということも大事だと思います。
あと、私が財務の人間だからという訳ではありませんが、チームに一人は財務に知見のあるメンバーがいると有益です(笑)
− 最後に、JBCC2020へ参加を検討している皆さんへ贈るメッセージをお願いします。
ビジネススクールで学ぶ方の多くは、将来経営トップ、ボードメンバーとして活躍することを意識されているのではないかと思います。しかし実社会でそのようなポジションにいるMBA生はまだ少ないのでは無いでしょうか。その点で、JBCCは来るべき日の絶好の予行演習と言えます。
また、この大会を競技と捉えると、全国大会かつ学校対抗という要素は大いに盛り上がれると思います。日常の業務やMBAの講義とはまた一味違うエキサイティングな経験を、一人でも多くの方に是非体験していただきたいですね(笑)